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中国越境ECについて思うこと – 越境ECの「不都合な真実」

By |2019-04-22T10:59:02+09:002018年1月21日|Categories: 中国越境EC|Tags: , , , , , , , |

はじめて自分の支付宝(Alipay)で買い物をしたとき、その快適さにとても感動しました。
たしか、7年くらい前だったと思いますが、とりわけアカウント開設のオフラインでの煩雑さに比べると、実際のオンラインでの利用があまりにもシンプルで簡便だったため、そのコントラストとギャップがいかにも中国的だと妙に感嘆した覚えがあります。

それ以前にも、おそらく2006年前後から、淘宝网(タオバオ)のサイトは頻繁に覗いて見ていました。iPhoneはまだ登場しておらず、誰もがパソコンでネットショッピングをするのが当たり前だった時代です。淘宝のあのオレンジ色の丸まった漢字三文字のロゴは、当時からまったく変わっていません。あのロゴが、eBayを打ち破り、eBayを中国から撤退させたのだと(唐突ですが)私は信じています。

中国のネット通販が成長することは多くの人が予想していました。しかし、2000年代の日本で「ネットで中国にモノを売る」という発想は、まだあまり真剣に考えられていなかったと思います。私自身も中国茶の輸入販売をしていて、中国は「仕入先」であり、中国人を「お客様」にする商売をしていたわけではありません。

先駆者はいました。多くは、日本に滞在している日本語の上手な中国籍のビジネスマンで、中国の富裕層向けに日本の高品質な商品を売ることを情熱的に語り、宣伝本を出版し、独自のサービスを立ちあげていました。いま、そのすべてが消えてしまったかどうかは知りませんが、発想そのものが間違っていたわけでは断じてなく、単に「早すぎた」ということなのかもしれません。私個人としては、現在の中国越境ECブームよりも、むしろ当時の彼らこそがホンモノだったのだ、と考えています。

実は、淘宝网の創始者であるアリババCEOの马云(ジャック・マー)も、日中間の越境ECでは一度「失敗」をしています。
2010年、淘宝はYahoo!JapanのYahoo!ショッピングと提携し、双方のプラットフォームの商品を国境を越えて相互に販売し始めました。中国では「淘日本」、日本では「Yahoo!チャイナモール」という名前でした。しかし、自動翻訳の精度の悪さ、送料関税の加算、領土問題の発生、震災後の放射能懸念などにより、2年足らずでこの提携サービスを終了させています。
(もし、この淘宝とYahoo!ショッピングの提携がつづいていれば、日本での中国越境ECの風景は、いまとは随分違っていたものになっていたはずです。)

その間も淘宝の中国本土での成長は止まるところを知りませんでした。淘宝商城としてスタートしたB2C版Taobao Mall(Tmall)は、2012年に天猫(Tian mao)と改名し、その年の11月11日に100億元の売上記録を建てます。そして、2016年の11月11日にはその10倍以上の1200億元(約2兆日本円)の売上を1日で達成しました。売上高はアリババの自社発表の数字なので透明性はありませんが、ものすごく大きなマーケットであることは確かです。

天猫と淘宝のプラットフォームはドメインも違い、基本的にはそれぞれ別のプラットフォームなのですが、バックエンドでのユーザーアカウントは共有されており、淘宝のアカウントでそのまま天猫の商品を購入することもできます。実際、淘宝からの商品検索では天猫出店の商品が上位表示されるようなアルゴになっており、アリババにとって収益性の高い天猫への誘導が積極的になされています。
天猫は、アリババに認証された法人のみ出店できるので、品質面での訴求は確かにしやすいのですが、実際には、最もボリュームの大きい中間層のユーザーにとって「天猫は高い」という印象があるので、天猫で欲しい商品が見つかっても淘宝のほうで同じ商品を探す傾向があります。また、淘宝店舗でのレヴューによる評価は数年以上の運営実績がないと繁盛店の証しにはなりませんが、天猫では出店直後から「売れている」感を演出できるので、出店企業にとってはプラスなのですが、消費者の視点からは「天猫だからと言って絶対に信用できるわけではない」という暗黙の判断も動くので、淘宝店舗が一方的に不利になっているわけではありません。
淘宝の出店料は基本無料ですが、天猫は契約出店になるので、天猫に出店しても次の契約更新条件をクリアできず、すぐに消えてしまう中国企業店舗が多いことも忘れるべきではありません。これは、天猫だけではなく、JD京東に関しても同じです。

日本法人は、天猫に出店するには中国法人を作り、該当するライセンスを取得しなければなりません。物流面では中国保税区へのコンテナ納品という流れになり、中国国内ではアリババ傘下グループの快递が受注後ドアツードアで配達してくれます。正攻法ですがハードルは高く、天猫出店だけのためにこれができる企業は限られてきます。
事実、アリババは天猫に出店できる外国企業を選別しており、日本法人のままであっても香港の天猫国際には出店申請することはできますが、やはりアリババの審査に通らなければなりません。

一方、これが最もハードルが低く、その気になれば誰でもチャレンジできるアプローチなのですが、法人ではなく、個人名義で淘宝网に出店する方法もあります。
淘宝に店を開くには、先ずは支付宝のアカウントを取得する必要があり、支付宝を使えるようにするには、中国の銀行に口座を開く必要があります。これは天猫であっても基本的には同じ仕組みで、つまり、天猫や淘宝に出店して売上があっても、それは支付宝と紐づけられた中国の銀行口座への出金となり、その売上を回収するには中国の銀行からお金を移動させなければなりません。特に、外国人個人名義の口座はインターネットバンキングでの両替や海外送金ができないので、中国内に信頼できるネットワークを持たない場合は、売上回収のために自ら中国へ出向いて銀行から現金引き出し(と両替)をしなければなりません。また、中国は外貨の持ち出しを制限しているので、金額面でも留意する必要があります。

支付宝(Alipay)は世界随一のフィンテックですが、仮想通貨とは違い、既存の銀行口座のバリューと紐づいて機能しているので、現状は為替や国境からフリーになっているわけではないのです。これは微信支付(WeChat Pay)に関しても同じで、本人認証は日本のクレジットカードでもできるのですが、実際にWeChatにチャージをするためには、中国の携帯番号でWeChatに登録し、WeChatのアカウントを中国の銀行口座(中国内で発行されたクレジットカード)と紐づけなければなりません。
中国のすべての銀行口座には各人の身分証番号が登録されていますので、事実上、中国国家は中国国民の消費行動の大半を一元管理できるビッグデータを保有しつつあることになります。

天猫も淘宝も、中国人が中国人のためにつくったECプラットフォームであり、中国人のルールに支配されています。
そこで外国人が商売をするということは、代金回収という首根っこの部分を「中国」に握られている状態になります。ある日突然なにか(その「なにか」が何なのかは分かりませんが)が起こり、それまで築いた网上店铺が砂上の粉塵に帰すかもしれません。

結局、中国越境EC界隈が、さながらゴールドラッシュのように運営代行サービスで活気づいているのは、このような中国という国に根ざした潜在的リスクが背景にあるからで、単に中国語ができないからとか、中国のネットビジネスがわからないから、とかではないと思います。代行業者を通して名義を借りたりすれば、中国特有の様々なリスクを緩和できるのは事実です。

化粧品が売れる、炊飯器が売れる、と言っても、資生堂の化粧品やタイガーの炊飯器をこれから個人レベルで転売しようとしても、おそらくは何の実りもありません。それは、それこそ2000年代後半から日本在住の中国人が淘宝で展開してきた代理購入商売であり、淘宝で「日本代购」などのワードで検索すると、「全球购」というカテゴリ下にすでに皇冠マークの優良店がキラ星の如く存在しています。
彼らはチームを組み、法人化し、仕入れを強化し、幾年もの競争を勝ち抜いてきた中国越境EC専属の歴戦の勇士です。中国の関税変更にも柔軟に対応する在庫管理能力があります。「日本直邮(日本から直送)」を謳い文句にしますが、商品によっては中国国内に在庫を持つネットワークも駆使します。また、日本の売れ筋商品を熟知しているだけでなく、自らの店舗を専門店化し、店長のキャラでユーザーの心を摑み、中国人の嗜好や流行に合わせて中国語のチャットで絶妙のセールスを行うことができます。最近では「直播」というライブストリーミングで、テレビレポーターのように店先で商品の説明を行い、リアルタイムで質問に答え、場合によっては試着などもして、しかもそのライブ中継を毎日延々とフルタイムワークで行い、驚くほどの売上をあげます。彼らにとってそれは自らの労働でなす業であり、一方、中国語のスキルのない日本人がそれと同等のサービスをするには、やはり代行業者に頼るしかなく、その段階でもう勝負はついています。

しかも、いまはC2Cは淘宝だけでなく、微店もあります。微店は微信(WeChat)アカウントと連携したスマホのアプリだけで構築/運営できるミニ通販で、中国ママ友の巣窟とも言えます。そのようなネットワークに入るのに、コンサルタントのアドバイスなどは無用の長物で、運営代行などあまりにも非合理です。パソコンのできない中国人ママが隙間時間にスマホでサクッと無料で完成させることを、日本の企業が大枚をはたいてああでもないこうでもないと暗中模索するのは、スタートラインの発想が間違っています。そもそも、WeChatストアのオフィシャル企業アカウントは、天猫出店と同じように、中国の法人格がないと開設できません。

インフルエンサーを利用した広告出稿などを委託しても、母集団が数億の言葉の海の中でどれだけのコンバージョンに結びつくのか、その効果を数字だけでなく、心理的な波及を逐一分析できる中国語の読解能力が自分(自社の従業員)にない限り、誰か人任せにするだけでは、なかなか次のステップへと繋がる手ごたえを得るのは難しいかもしれません。

とはいえ、何事もやってみなければ始まらないのは道理で、中国越境ECに関しても、中国語ができないからと言って何もしないというのでは、せっかくのチャンスを逃していることになります。特に、レアなオリジナルブランドを製造するメーカーにとっては、中国が好き嫌いに関わりなく、中国市場を意識しないわけにはいきません。网易考拉(Kaola)や小红书(Red)など、新しい越境ECプラットフォームも登場し、この市場がまだ成長の途上にあるのは間違いないでしょう。

私自身、日本人/日本法人にとって、これから中国越境ECに新規で参入するのに、まったく可能性がないと思っているわけでもありません。
正攻法で天猫に出店するのなら、日本のアリババalibaba.co.jpに問い合わせるのが一番です。出店条件をクリアできるのなら、とにかく運営代行を利用してでも反響を見るのは得策だと思います。あるいは、もし予算が許すなら、天猫運営のために中国人の従業員を新たに雇うべきです。
個人名義で淘宝に出店するのなら、先ずは淘宝网のサイトをしっかり研究することが大切です。(日本のIPアドレスから淘宝にアクセスすると、world.taobao.comの淘宝日本にリダイレクトされてしまうので、サイト左上のストアスイッチャーで「中国大陆」を選択し、中国大陸の中国人が見ているwww.taobao.comの本ストアを見るようにしてください。)

马云(ジャック・マー)は、事あるごとに「アリババは小さな会社のためにある、アリババの成功は小さな会社のおかげだ」という趣旨のことを口にしていますが、それは中国の小さな会社のことであり、日本の小さな会社は、そのアリババの天猫/天猫国際に出店することすらままならない状況です。いまも马云本来の思想が形なりにも生きているのは、天猫ではなく、淘宝网のほうなのかもしれません。

その上で、どのようなポジションであれば可能性があるのか、どのような攻め方であればリスクを軽減し、尚且つ将来的な成功が見込めそうなのかについて、淘宝や天猫というプラットフォームだけでなく、自社サイトの展開やMagentoの利用を絡めて、また別の記事で私の見解を書きたいと思います。

Magento2は本当に使えるのか?

By |2019-05-29T11:11:46+09:002017年12月15日|Categories: あいさつ, Magentoの設定, Magentoバージョン, 中国越境EC|Tags: , , |

結論から言うと、もう少し待つべき、です。

Magento2系は、2015年11月に2.0.0がリリースされ、先日2017年12月14日の段階で、2.2.2までバージョンが更新されました。
初リリースから2年を経て、バグや不具合の修正はだいぶ進んだと言われていますが、それでも、まだ基本機能にさえ様々なバグがあると報告されています。

たしかにMagento2のインターフェイスの改善は素晴らしく、管理画面の見やすさは明らかに向上しました。
しかし、JavaScriptを多用しているためか、オンラインストアの生命線ともいうべきチェックアウト(カート画面)の読み込みが重く、Magento社の公式案内のスペックを満たしている環境下でも、Magento2のカート画面がサクサク動くという保証はありません。
新規サイトでアクセスが限られているストアであればともかく、現実的に一定のアクセスのあるフルライブ環境での実用を考えると、特にスマートフォンでの表示スピードに関しては、有料のエクステンションを入れて補強するか、あるいは相当なスペックのサーバー環境で構築する必要があるのではないかと思います。

いままでのMagento1系は、通常のシェアサーバーでも安定して動き、その導入の容易さから、小規模のストアでも世界中で数多く利用されてきました。利用者が多いのでMagentoベンダーも増え、それが結果的にたくさんのフィードバックを生み、速やかなバグ修正や機能向上に結びついてきました。
しかし、Magento2系においては、Magento社の戦略かどうかは不明ですが、どちらかと言うと、大規模ストアを前提に開発が進められているという印象があります。それは、Magento2の利用において、CLI(コマンドラインインターフェイス)での操作が推奨されている現状とも無縁ではありません。

Magento2のストアにテーマやエクステンションを新しくインストールすると、その度にSSHアクセスをして、黒い画面を開き、コマンド作業でMagentoのファイルを展開しなければならないのです。コマンドそのものはよく使ういつくかを丸暗記のように覚えればいいのですが、プログラミングに無縁の素人にとっては、これほど億劫なことはありません。(コマンド作業の例は、Magentoテーマの動画をご参照ください。)

しかも、Magento2では、エクステンションのインストールにComposerを使う方法もスタンダードになっていて、これは、コマンド初心者にはかなりハードルが高いと言えます。Composerは、PHPで作成されたファイルをローカル(自分のパソコン)に落とさずに、直接ネット上でファイルを引っ張ってきてダウンロード/インストールするためのプログラムです(と、とりあえず私はそう理解しています)。はじめてComposerの存在を知り、そのサイトを訪れた時、ベートーベンの厳つい顔のイラストが目に飛びこんできて、かなり面喰ったのを憶えています。なんだ、これは、と。

https://getcomposer.org/

思えば、Magento1系においては、Magento Connectを使うことで、画面上の操作だけでエクステンションをインストールすることができました。WordPressのようにクリックするだけでプラグインのインストールが完了するほどの爽快感はありませんが、それでも気軽にエクステンションのインストールを行い、ストア機能を拡張させることができました。
ところが、Magento2系においては、Magento Connectを引き継ぐMagento Marketplaceが、いまだベータ版のような状況で、エクステンションのストックも豊富ではありません。管理画面のSystem > Web Setup Wizardと連携して、Marketplaceで購入したエクステンションを画面上の操作だけでインストールできるように設計されていますが、環境により不具合も多く、安定して使えるようになるまでは、もうしばらく時間がかかりそうです。
また、Setup Wizardは、操作画面上からMagento2のアップデートもできるようになっています。しかし、これも失敗すると既存ファイルを消してしまい、ストア全体を壊してしまう不具合も報告されているので、注意が必要です。

一般のストア運営者は、デザインをいじったりコンテンツを更新するだけでなく、受注処理をすることに日々のパワーを使います。なので、管理画面の使い勝手や更新のやり易さが、プラットフォームの必要条件です。
しかし、Magento2は、お世辞にも使い勝手が良いとは言えません。もちろん、これは将来的には徐々に洗練化されると思いますが、今までのところ、むしろ、一般の運営者を遠ざけるかのように、わざと導入を難しくしているのではないかと勘繰りたくなるようなこともあります。つまり、サイト構築やサーバー管理を外注するような、ある程度の予算のある中規模以上のサイトを平均的利用者として想定しているのではないかと思わせる節があります。

もっと言うと、Magento社は、無料のオープンソース(CE版)の普及はそこそこにしておいて、エンタープライズ(EE版/ECE版)の契約をとれればいい、と割り切っているのかもしれません。
ちなみに、EE版の年間契約は日本円で約250万円~、ECE版(EE版+AWS Cloud)の年間契約は約450万円~と言われています。

実際、Magento2がリリースされた前後から、Magentoのシェアが増えたという話を聞いたことはありません。

サーバーインストール型のECアプリケーションとしては、WordPress+WooCommerceが高機能化したり、Magentoと同様に多言語多通貨対応のPrestashopなどの人気が上昇しました。また、ASPサービスとしては、Shopifyの存在感が圧倒的なものになりました。
Magento1系の公式サポートが2018年秋までと言われ、にもかかわらず、Magento2はまだ不安定で動かせないとなれば、よほどのMagentoマニアでない限り、Magento1系の運営者が他のサービスへの乗り換えを検討するのは自然なことです。Magento社が、このような流れを予想しなかったわけはありません。私の知人にも、Magento1.9からShopifyへ移転した人がいます。
Shopifyは一つのアカウントで多言語ストアの構築はできませんが、多通貨決済には対応しているので、単一言語(特に英語)のサイトを運営するのなら、実のところShopifyで必要十分なのです。

まして、日本人ターゲットの日本語のECサイトを構築するのなら、日本人の感性にマッチしているEC-CUBEやショップサーブなどを優先して使うべきです。スタートアップの日本語サイトが、わざわざ時間とお金と手間をかけてMagento2を選択しなければならないような理由は、私には思いつきません。もちろん、自らMagento構築のできるサイト運営者が、維持費削減のためにMagentoを使う例はあるかもしれません。あるいは、中規模~大規模のサイト運営者が、Magento2の高機能に魅かれて既存のプラットフォームからの移転を検討する例もあるかもしれません。しかし、その場合も、しっかり運営を継続していくためには、フロントエンドのデザイン内にchildテーマを作成し、日本人向けに相当カスタマイズする必要があると思います。Magento/Magento2のインターフェイスは、平均的な日本人にとって、決して馴染みやすいものではないからです。

Magentoが真に活きるのは、例えば香港のサーバーに英語デフォルトで構築し、同じストアを中国語(繁体字)で表示、さらに大陸の中国人もターゲットに含めるために普通話(簡体字)でも表示する、というケースです。この場合、決済通貨は香港ドルと人民元の2本建てとし、簡体字/人民元ストアは香港ドルのストアとは別ストアあるいは別サイトとして設定する、というマルチストア構成になります。

あるいは、東南アジアのマレーシアなどは多民族国家で、マレー語、英語、中国語が標準語として使われています。そのような地域をターゲットとする場合、同じストアを複数の言語ストアビューで表示し、ストアとしては統一します。そして、隣りのシンガポールもターゲットにするため、マレーシアのストアの商品内容(英語のストアビュー)はシェアするが、デフォルト通貨をシンガポールドルで決済できるように別サイトで構築する、というように、文字通りの意味での多言語多通貨のマルチストア構成を、一つのMagentoインストールで実現することになります。

Magentoは、日本で、越境ECサイトの王道と言われています。それは正しいのですが、使いこなすのは容易なことではありません。中国語圏向けの越境ECにポテンシャルがあると言われているのに、一方で、その越境ECの「王道」Magentoの基礎言語が英語であるということの矛盾は、ほとんど顧慮されていません。つまり、英語も中国語もそこそこできて、尚且つMagentoも使えなければ、中国語のMagentoストアを構築することはできないのです。(当たり前と言えば当たり前の話なのですが。)

構築も運営も外注してしまうと、コスト的に割に合わないような小規模サイトの運営者は、どうすればいいのでしょうか。自力で勉強してMagentoサイトを作るとなると、お金はさほどかかりませんが、膨大な時間が必要とされます。海外サーバーであれば、Magentoのインストールは1クリックでできますが、その後の作り込みや運営は、やはり一筋縄ではいきません。

そもそも本当にMagentoが必要なのか、という視点でプラットフォームの選択を再考してみるのもいいかもしれません。
Magentoは、サイト運営者にとって、目的ではなく、手段の一つです。自分のストア展開にとってMagentoの他にベターな選択肢があるのなら、そちらを選ぶべきです。
それでも、ASPのような制約のあるプラットフォームではなく、自由にサイト構築をできるMagentoのほうがいい、多言語構成を最小のコストで実現したい、越境ECサイトだからMagentoの世界標準のインターフェイスがほしい、というケースは多いと思います。立ちあげで苦労しても、ASPで発生する永続的なコミッションを考えれば、Magentoのある種の難解さは、イニシャルコストとして十分にペイする、という見解もあると思います。また、開発環境が世界規模なので、新しいECのトレンドをいち早く取り込むこともできます。

当サイト「Magentoできるもん」は、とりあえずこれだけを押さえればMagentoサイトを構築することができる、という趣旨で公開していますので、できる限りのアウトプットをし、今後コンテンツの充実をはかりたいと考えています。

Magentoデモ・導入事例のページで紹介しているZENVAVAというライブ環境のサイトがあるのですが、これは、2016年初頭に、1年ほどの準備期間を経て、Magento1.9でオープンしました。
実は、このZENVAVAサイトを、いま、Magento2.2へ移行しようとしています。

この1.9→2.2の移行作業については、目下のことろ、2.2.でCSVの商品一括データをインポートできない(エラー回避できない)、複数選択商品の在庫の有無がConfigurable Swatchesにきちんと反映されない、等のバグがあり、いささか途方に暮れています(*)。
1.9のSQLデータは、Magento社の公開しているMigration Toolで移行できたのですが、商品詳細の変更箇所などCSVで対応しようと予定していたことができず、結局手作業で編集しています。

つくづく思うのですが、Magentoの本当に面倒なところは、なにか不具合が発生した時に、それが自分の作業のミスなのか、サーバー側の設定に問題があるのか、あるいはサードパーティーのテーマ/エクステンションとの兼ね合いに齟齬があるのか、それともMagento本体のコードにそもそもバグがあるのか、すぐには分からないことです。上記のケースも、検索してみてると複数の人が同じようなトラブルを報告していて、且つ一様に解決していないので、それらの情報の最大公約数的なところを総合して、「たぶん、これはMagento2のバグなのだろう」と暫定的に結論づけています。

おそらく動いてくれるだろう、という感触はあります。
しかし、もしお急ぎでないのなら、Magento2系は、あと半年くらい、2018年初夏くらいまで待つのがいいのではないか、というのが私の個人的な感想です。
(もっとも、新規の立ちあげには時間がかかりますので、Magento2でサイト構築をスタートするには、今がちょうどいい頃合いとも言えます。)

Magentoのエクステンションを販売している海外の開発者も、自らのエクステンション販売サイトは、未だMagento1.9のままの人が多いです。Magento2のエクステンションを、Magento1.9のストアで販売しているのです。

彼らのストアがMagento2へ移行する時、その時こそ ”機は熟した” と見るべきかもしれません。

(*)Configurable Swatchesの表示バグは、ここここで論じられています。
2016年8月に報告されているバグが、2017年12月現在も解決されておらず、第三者モジュールmjankiewicz/MagentoConfigurableProductを入れないと修正されません。2.1.xでこの修正がコアに回収されたようですが、2.2.xから同じバグが再現されているようです。

追記(2017年12月末)
ZENVAVAサイトのMagento2への移行は完了しましたが、同上モジュールの採用は見送り、コア修正を次のアップデートまで待つことにしました。いかなる理由であれ、Magentoのコアコードに手を入れてはならない、というのが鉄則だからです。表示の改善は必要ですが、在庫有り商品の受注には影響は出ていません。

追記(2018年7月)
Magento2.2.5へのアップデートにより、上記バグは解消いたしました。

運営者あいさつ

By |2019-02-28T11:24:08+09:002017年10月15日|Categories: あいさつ, 中国越境EC|Tags: , |

こんにちは。

世にあまたある「できるもん」系サイトにお越しいただき、ありがとうございます。
第一香貿易合同会社の小林と申します。
基本的に、お茶屋です。

2006年に中国茶の通販店「中国茶の清香花楼」を中国人妻とはじめました。
リピートのお客様もついてくださり、楽しかったのですが、8年目で、諸事情によりお茶を休業することになりました。
そこで、休業中に、中国から世界へ発送という逆越境ECの「ZENVAVA-Zen Fashion」というサイトをオープンしました。
これは、Magentoをベースにストア構築をしました。

Magentoストアの立ちあげにあたっては、日本語で得られるMagentoの情報が少なく、苦労しました。
壁にぶつかった時、それを突破する糸口を与えてくれたのは、Magentoの英語フォーラムでした。
フォーラムでの様々な人のやりとりを読み、同じように自分でトライをしました。
すぐに解決することもあれば、どこに問題があるのかも分からず、ただ時間が過ぎるだけの日もありました。
それでもまた検索し、ひたすらフォーラムの記事を読みました。
自分で質問をし、誰からかの回答を待つこともありました。
問題が解決した時の喜びは、自分の店の商品が売れた時と同じように、とても大きなものでした。
そうして、一つひとつ、壁を乗り越え、なんとかオープンに至りました。

もちろん、ECサイトというものは、オープンできて成功というわけではありません。
集客、販促、発送から、顧客対応、品質管理、仕入交渉、資材購入まで、ほとんど商社のような機能を芥子粒ほどのサイズでやり繰りすることになります。
しかも、日々の運営で課題は増え、とりわけネットの向こう側の声なき声に耳を傾けねばなりません。
越境ECであれば、尚更その課題は複雑なものに思われます。

しかし、幸いにも、Magentoは世界中で広く利用されています。
それは、プラットフォームとして、そのシステムやインターフェイスに普遍性があるということです。
Magentoをベースとすれば、国境を意識することなく、モノとお金と情報を巡回させることができます。
つまり、より大きな意味において、売り手と買い手が、共通の言語で会話をすることができるのです。
英語圏の越境ECであれば、eBayやAmazonに出店するのもいいかもしれません。
ただ、より自由度の高いオリジナルな展開を志向するなら、自社の独自サイトになります。
そして、Magentoは、日本人にとっても、越境EC自社サイトのベースとして、第一選択肢になります。

私は、Webデザイナーや開発者ではありません。
それでも、ネット上の情報を整理することで、なんとかMagentoストアを構築することができました。
特に、Magentoの英語フォーラムで得られた知見はとても貴重なものでした。
その経験から、日本語でも同じようなサイトがあればいいと思い、この「Magentoできるもん!」を公開した次第です。

Magentoは、オープンソースとして、誰でも無料で利用をはじめることのできるECプラットフォームです。
そのため、スタートアップの小規模サイトが、コストを抑えてサイトを構築し、ストアをオープンすることができます。
運営が軌道に乗り、アクセスが増えてきたら、エクステンションを追加したり、サーバープランをアップグレードしたりします。
Magentoのポテンシャルは高いので、たとえ個人の規模で立ちあげても、将来的なストアの拡張性は無限大です。

わからないことは、どうぞフォーラムで質問をしてください。
あなたがわからないことは、きっと、別の誰かもわからないことです。
その問題をネット上で共有し、解決のプロセスを日本語で読めるようにすることが、当サイトの目標です。

また、当サイトでは、海外サーバーやテンプレート頒布など、英語圏でメジャーなサービスを紹介しています。
これは、越境ECとしてSEO的に有利だからというのが主な理由なのですが、それと同時に、もう一つ重要な側面があります。
それは、海外サービスを利用することで、自分の中に無意識的に根づいている日本的サービスの固定観念から抜け出すことができるというメリットです。
外国語の渦中に自らのビジネス環境を投入することで、自分自身が、いつの間にか海外のお客様の視線に近づくことができるのです。

越境ECは、インバウンド消費とは違い、あくまでも「海外進出」のひとつの形であり、アウェイでの戦いです。
日本に旅行に来た外国人をお客様にする場合は、現実の日本社会の圧倒的なリアリティーの中で有利に商売を進めることができますが、越境ECにはそのアドバンテージはありません。

はじめて行った海外で、自分が「外国人」として、見ず知らずの街の路上で露天商にでもなったシーンを想像してみてください。
もちろん、これは極端な比喩ですが、しかし、越境ECの根本はこれと同じです。
ただ、Magentoというアプリケーションの装いを身に纏うことで、露天商ではなく、一角のウィンドウショップになれるのです。

サイトのトップでも書いたのですが、私は、個人や零細企業こそが、海外に目を向けてビジネスを展開すべきだと考えています。
グローバリズムは、とかく悪く言われることが多いのですが、その弊害を嘆いていてもなにも解決しません。
日本にいながらにして日本円以外の通貨で売上を立てることのできる越境ECは、インターネット時代の恩恵です。
そして、個々人が常に外側の視点を持つことは、ひいては、日本国内の産業をミクロのレベルから活性化させることにも繋がるのではないかと思います。

尚、越境ECというと、中国・香港・台湾向け、あるいは東南アジアを含めた中華圏向けが大きな潮流になっています。
独自サイトの展開であれば、香港やシンガポールのサーバーにMagentoで構築することになります。
一方、中国大陸内のサーバーやCDNサービスを使うには、中国に法人を設立してウェブサイト運営の許可証を取得しないといけないので、かなり面倒です。そのため、中国大陸がターゲットであっても、先ずは香港のサーバーを便宜的に使うのがベターとされています。
中国語圏の越境ECについては、いずれブログで思うところを書きたいと思います。

お問い合わせはお問い合わせフォームから。
通常のMagento関連のご質問、ご不明な点は、フォーラムに登録してトピックの投稿をお願いします。
当サイトの内容に疑問点がある場合も、ぜひフォーラムにてご指摘ください。
皆様の投稿をお待ちしています。