Adobe+Magentoは、オープンソースであり得るのか?

By |2018-09-13T18:48:03+09:002018年5月23日|Categories: Magentoバージョン|Tags: , , |

1. AdobeがMagentoを買収

2018年5月22日、AdobeがMagentoを買収するというニュースが流れました。

Adobe acquires ecommerce CMS Magento for $1.68 billion
https://thenextweb.com/insider/2018/05/22/adobe-acquires-ecommerce-cms-magento-for-1-68-billion/

Adobe、Magento、双方とも公式ブログでの表明もあり、具体的なプランについては触れられてはいませんが、アナウンスによると、現状のAdobe Experience Cloudのサービス内にMagentoが導入されることになるようです。Experience Cloudの内容は、日本のAdobeのページを見ると日本語で読めるので、イメージがつかみやすいです。

ここからすぐに連想するのは、Magento Enterprise Cloud Edition(有料)が、そのままAdobe Experience Cloudに移行するのではないか、ということです。CloudのないMagento Enterprise Editon(有料)の顧客についても、やはりAdobeのサービス内に段階的に統合されていくのではないかと想像します。(あくまで私の個人的な予想です。)

問題は、Magento Community Editionの、無料のオープンスース版です。
MagentoがAdobeに買収されてしまったら、オープンソースのMagento(無料)を使うことができなくなってしまうのではないか、という懸念があります。
なにせ、Adobeはクローズドなソフトのライセンス料を主な収益としてきた会社であり、その意味では、Magento社とは水と油のような関係です。

上のニュース記事でもこの点について触れていて、この記事では、比較的楽観的にコメントされています。

AdobeがMagentoオープンスースを変えるか

曰く、”Adobeには、開発者や運営者が無料で使えるいまのMagentoのあり方を変える計画があるかもしれない。しかし、この点に関しての詳細は、買収手続きの完了後に公表するとAdobeは言っている。実際、Adobeには、Adobe XDなどの無料で使えるサービスも登場している。そう考えるなら、Magentoオープンソースが生き残る道はあるだろう。”

これも、この記事を書いた人の予想、憶測の範囲かもしれませんが、当面の方向性としては、この可能性は決して小さくないのではないかと思います。

2. Magentoはいつまでオープンソースとして使えるか

プレスリリースの発表後まもなく(というか、ほぼ同時に)、Adobeブログ内に重要な記事がアップされました。

Doubling down on Adobe’s open platform vision with Magento
https://theblog.adobe.com/doubling-down-on-adobes-open-platform-vision-with-magento/

Matt Asay 氏という、Adobe開発チームの人の書いた記事で、買収ニュースにより、Magentoコミュニティーからあがる疑問や懸念に対して、先取り的に回答しています。なので、これは、かなり入念に準備されて書かれた原稿であると思われます。

この中で一番目を引いたのが、

The point is: open source is in our DNA. We know that the key to getting value from open source is by giving value through contribution to and collaboration with these active developer communities. We’re excited to do much, much more with Magento.

この一節です。

“オープンソースは、AdobeのDNAに組み込まれている。開発者コミュニティーにおいて、相互に貢献し、共同作業をし、価値を分け合うこと。このことにこそオープンソースの意義がある。Adobeは、Magentoコミュニティーとの共同作業ができることに、とても、とても、エキサイトしている。”

Matt氏は、Adobeのサービスの多くがオープンソースに依存しており、いまやGitHubにも何人ものAdobeの開発者を見つけることができる。なので、AdobeがMagentoのオープンソースとしての価値を否定することはないと強調しています。むしろ、Adobeは、Magentoコミュニティーの一員になったのだいう切り口で、「買収」という主従関係を棚上げにさえしています。

Twitterでは、Matt氏は、様々な質問にざっくばらんに回答しています。

Magentoコミュニティーについて

「Adobeは、Magento単体というよりも、むしろ、オープンソースの強味を必要としている。
これはこれからも継続し、成長し、広がっていくものだ。」

Magentoコミュニティーについて

Q「Magentoは、これからも長い間、オープンソースであり続ける?」
A「10,000年を、その”長い間”としてカウントしていいかな。」

もちろん、これらのMatt氏の言葉を、買収による一時的混乱を避けるためのAdobeの広報、と捉えることもできるかもしれません。実際、詳細なプランはこれから検討協議されるはずであり、一定期間の後に、AdobeがMagentoをクローズにしてしまう可能性を完全に払しょくすることはできません。Adobeが内々にMagento3/MagentoCCを開発する可能性も無きにしも非ずなのです。

ただ、現行Magentoのコードは、その25%ほどがコミュニティーの貢献により組み込まれたものと言われており、Magentoの魅力を支えているエクステンションにしても、ほぼすべてがパートナー会社、ベンダー、エージェントによる開発です。
MagentoがMagentoであるのは、Magentoのコミュニティーが存在するからであり、オープンソースとしてのアクセスを遮断すれば、MagentoはMagentoではなくなってしまうに違いありません。

例えば、Magentoと同様に多言語多通貨のECプラットフォームとして、PrstaShopというアプリケーションがありますが、PrestaShopにも、オープンソース版とCloud版があり、両者は共存しています。
アプリケーション開発の一部をコミュニティーに委ねることで、企業としてはコスト削減と同時に、プラグイン/モジュール等で商品価値も高めているわけであり、ビジネスモデルとして十分に機能しているのだと言えます。

もし数年後のAdobeが、このようなモデルはワークしないと判断し、唐突に戦略を変更するとしたら、Magentoコミュニティーからの反発は避けられず、端的にM&Aの失敗ということになり兼ねません。

Magentoのパートナー会社は全世界に数千あると言われており、数万、数十万の開発者がMagentoに関わっています。
いくらAdobeでも、そのすべてを「買収」することはできません。
なので、当面は、Matt氏の上記の言葉を素直に受けとめておいていいのではないかと思います。

前回の記事、Magento1.9と2.xの各バージョンのサポート期限についてでは、今夏~今秋にリリース予定のMagento2.3のサポート期限を、2020年秋頃と予想しましたが、最悪でも、その時期までは、Magento2.3のオープンソースは、無料で使いつづけることができるだろうと考えます。既にリリースの決まっているバージョンのサポートを、途中で打ち切るようなことは、どのような条件下でも考えづらいからです。

では、その後はどうなるのか?
いまのところ、なんとも分からない、というのが実情ではないでしょうか?

将来的に、仮に Adobe Magento CC のような安定バージョンが月額数千円で利用できるなら、それはそれでハッピーなことかもしれません。
ただ、その場合も、周到なスケジュールの下で徐々に流れを作っていくと思うので、現在のMagentoコミュニティーが突如消滅するようなことはないだろうと思います。

Adobe+Magentoの方向性について、また新しい情報が入りましたら、追々このブログにてご紹介いたします。